気温が零下15度にも達するこの時期に、南(内)モンゴル西部アラシャー・ジューン・ホショー(阿拉善左旗)、アラシャー・バローン・ホショー(阿拉善右旗)、エジネ・ホショー(額済納旗)で、中国当局は大がかりな取り壊しプロジェクトで新年をスタートさせた。この地域のモンゴル人牧民の家屋・柵・その他の建築物が地元当局によって自由も優遇もインフォームドコンセントもないままブルドーザーで解体された。
南モンゴル人権情報センター(SMHRIC)がアラシャー・ジューン・ホショーから入手した短い動画には無力な牧民たちがブルドーザーで家を解体される前で役人たちを阻止しようとしているのが映っている。
「コミュニティでブルドーザーによる解体が始まってから『皆さんの家や柵は取り壊さなければならないのです』と地元政府の役人が告げたのです」と、エジネ・ホショーのトヤーと名乗る牧民がSMHRICの電話インタビューに不満げに答えた。「この極寒期に人にも家畜にも家屋なしでどうやって生きてゆけと言うのですか」
「私の家にはブルドーザーはまだ来ていませんが、解体には反対する決心です」と、トヤーはSMHRICに語った。「ここは祖先から受け継いだ土地で、私たちにはここで生きるためのあらゆる権利があるはずですから」。
「アラシャー・バローン・ホショーの農牧コミュニティにおける倒壊の危険にある建物の改築・修築作業を実施する提案」という公文書が最近ホショーの党委員会から提出された。この文書によると、アラシャー・バローン・ホショーだけで、7つの半牧畜ガチャー(ガチャーはいくつかの村で構成される)、9つの牧畜がチャーで牧畜が一部禁止、24の牧畜ガチャーで完全に禁止され、「10フルカバー・エンジニアリング・プロジェクト」の一部である「解体プロジェクト」に影響を受けている。
「10フルカバー・エンジニアリング・プロジェクト」は、自治区政府による3年間のプロジェクトで、その内容は「倒壊の危険のある建物の解体、安全な飲料水の確保、地方のコミュニティの都市化、電気・ラジオ・テレビサービスの全村普及、教育インフラの開発、学校の安全性の改善、健康・文化センターの標準化確立、地方の村々に便利なスーパーチェーンの設立、農牧コミュニティ住民への最低年金の確保」である。
上記の公文書では、いくつかのケースで一戸当たりたった1万元(=約18万円)という非常に限られた予算でモンゴル人コミュニティを迅速に都市化することを提案している。
「これは、都市化を通じて私たちの牧畜文化とライフスタイルを破壊する漢人による決定打にほかならないのです」と、影響を受けているコミュニティのダンバーが語った。「モンゴル文化とアイデンティティの中心には牧畜があります。牧畜が壊滅すれば、私たちは独自の文化をもつ民族として存在できなくなります」。
記憶に新しいところでは、2015年12月17日、馬やラクダに乗ったエジネの牧民約100人が地元政府に対して法的権利を守り、牧地を不法占拠する甘粛省の漢人を処罰することを主張してデモを行った事件が起きている。
中国は、南モンゴルにおいて牧地と地下資源の開発を進めるため、アラシャーのかつての美しい緑の土地が活況を呈する中国鉱業の標的にされてきた。乏しく貴重な地下水脈が枯渇させられ、脆弱なエコシステムが破壊されてきた。拡大する鉱業と漢人植民者がこの地域のモンゴル人ラクダ飼いの独自の文化の存在を脅かしている。
アラシャーの牧民の家屋が解体された(2016年1月4日)
中国の公文書が家屋の解体を正当化している