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【誇れる国、日本】防空識別圏を設定した中国覇権主義に打ち勝つ防衛策を
Zakzak
2013年12月1日
号
中国が、日本の防空識別圏に一部重ねて、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に、一方的に識別圏を設定した。これは、習近平国家主席による政権掌握のための強行策であり、中国の覇権主義、膨張主義である。
日本の防空識別圏は、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が1945年に制定した空域をほぼ使用しており、これまで問題はなかった。今後、識別圏の重なるエリアに侵入した国籍不明機に、航空自衛隊の戦闘機がスクランブル(緊急発進)すれば、中国も戦闘機を接近させるなど、一触即発の事態も予想される。中国が何の事前協議もなく、このような決定をしたことは座視できない。
北朝鮮の金正恩第1書記は後継者指名後、韓国・哨戒艇「天安」撃沈事件や、延坪島砲撃事件を引き起こしたといわれる。独裁国家は体制の転換期、過激な行動で危機を演出し、体制掌握を図る。こうして指示に従わない、意に沿わない人物らを排除するのだ。
こうしたなか、スペインの全国管区裁判所が、チベット族に対する「ジェノサイド(大虐殺)」などに関与した疑いで、中国の江沢民元国家主席ら5人に逮捕状を出した。私はスペインの裁判所の勇気ある行動に賛辞を贈りたい。
中国は、日中戦争や中国内戦の混乱に乗じて、内モンゴル(南モンゴル)や、新疆ウイグル(東トルキスタン)、チベットなどに次々と侵攻し、自治区としてきた。中国の侵略・同化政策は、自治区に漢民族を大量に送り込んで少数民族を弾圧したうえ、若い女性を自治区外で就労させるなどして、人口比率の逆転を目指すものだ。
特に、チベットでは「民族浄化政策」とも言える手法に不満が爆発している。僧侶などによる抗議の焼身自殺は100人以上になるという。南ベトナムでの抗議自殺をあれほど報道した日本のメディアは、このことをあまり報じない。かつて私と対談したチベット出身のペマ・ギャルポ氏は「人口の5分の1にあたる120万人が犠牲になった」と語っていた。
日本ウイグル協会が2009年3月に都内で主催したシンポジウムでは、ウイグルでは40回以上の核実験が行われ、少なくとも19万人以上が死亡した-と発表された。
中国はこれ以外にも、インドとの中印国境紛争や、ソ連とのダマンスキー島をめぐる中ソ国境紛争、ベトナムとの中越戦争、フィリピンとの南沙諸島領有権争いなど、周辺諸国と絶えず紛争を起こしてきた。
今回、東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで、ついに、わが日本に対しても、その本性をあらわにしてきた。
安倍晋三首相は国会答弁で「力を背景とした現状変更の試みには、わが国の領海、領空を断固として守り抜く決意で対応する」と語っていた。日本としては、理不尽な中国に付け入るスキを与えず、この危機をチャンスに、憲法改正を含む法整備をして、有効な防衛策を講じるべきだ。
日本は積極的平和主義に基づく、「やられたらやり返せる攻撃力」を身につけるべきだ。民族の歴史に誇りと自信を持てる国づくりを急がなければならない。
■元谷外志雄(もとや・としお) 石川県小松市生まれ。信用金庫勤務後、27歳で注文住宅会社を創業し、その後、ホテルやマンション、都市開発事業などを手がけるアパグループを一代で築き上げる。同グループ代表。国内外の多くの要人と交友関係があり、政治や経済、軍事に関する知識も豊富で、社会時評エッセーも執筆する。著書に「誇れる祖国『日本』」(幻冬舎)、「報道されない近現代史」(産経新聞出版)など。