先週はじめ、新疆ウイグル自治区バヤンゴル(巴音郭楞)州ヘジン(和静)県のモンゴル人牧民が、観光と鉱山開発を拡大するため中国当局が牧民らの牧草地を収奪したことに抗議し、県中心部でデモを行った。
地方当局は直ちに警官を派遣し、群衆を解散させた。その際、約10人の参加者が逮捕されている。
牧民たちは「私たちの牧地を返せ」「私たちの温泉を返せ」「私たちの生活を返せ」「誰に環境破壊の責任があるのか」「私たちの自然環境を元に戻し、水と河川の汚染をなくし、空を永遠に青く、苦しみのない暮らしを!」。牧民たちは、開発プロジェクト、特に観光と鉱業を地元当局にやめるよう要求した。
「漢人には、モンゴル人にとって水がどれほど神聖で価値のあるものかが理解できないのです」と、そのコミュニティー出身のモンゴル人ソドー氏が、南モンゴル人権情報センター(SMHRIC)による中国当局と地元牧民の対立に関する電話インタビューに答えた。
「水源の汚染は、モンゴル人にとって絶対に受け入れることはできません。ところが、最近中国の観光会社がやって来て、私たちの牧草地を破壊し、アラシャーン河上流にトイレまで作って、汚物を私たちの最も神聖な水源へ直接捨てているのです」と、ソドー氏は電話インタビューに怒りをぶちまけた。
「私たちは、国民党軍、共産主義中国、カザフをも含めた侵略者から牧地を守るため何世代も闘ってきたのです」と、ソドー氏は故郷を守ってきた歴史にふれ、「1980年代まで私たちモンゴル人は実弾で完全武装し、美しい土地を守るため侵略者たちと闘っていました」
コミュニティーの牧民たちはまた、国営・民間にかかわらず鉱業が適切な対策を取らないため、自分たちの自然の土地を破壊し汚染していると訴えている。
「観光業に比べると、鉱業はいっそう有害です」と、ヘジンで大きな影響を受けたモンゴルのコミュニティーからの書面の情報が伝えている。「私たちの土地は開発され、水資源は枯渇しています」
ヘジン地下資源管理局のウェブサイトには、特にこの地域が鉄、マグネシウム、金、銅が非常に豊富であることを明記している。同局サイトによると、鉄鉱の埋蔵量は約10億トン、マグネシウム1億トン、銅30万トンである。同局は、さらに2010年4月27日時点で、少なくとも48の開発権が発行されていることを明らかにしている。それらのうち13件は鉄鉱の開発権である。
「広大な領域に人口が希薄で、私たちの県は鉱物資源に富んでいます。すでに410か所の試掘サイトが特定されています。「それらのうち27か所は、コングスィーンゴル・ソム、バヤンボラグ(巴音布鲁克)、バローンタイ(巴倫台)郡郊外に広がる鉄鉱の試掘サイトです」と、地下資源管理局のサイトにアップされている。
中国の日刊紙『新疆日報』は2013年7月19日、ドンバ鉄鉱山で初めての大型鉄鉱・亜鉛・金の複合鉱山が発見され、これにより同鉱山は地域の四大鉱山の一つになったと報じた。
これらモンゴル・コミュニティーにおける鉱山事業の拡大に伴い、地元牧民は開発の必要に応じて、牧草地だけでなく暮らしやライフスタイルを手放さざるを得なくなる。
国営テレビ局CCTVによれば、「ヘジン県の牧民は牧草地を守るため故郷を離れた」(2012年5月7日)という番組を放送し、牧民たちは中国政府の開発と環境保護プロジェクトのために自らの土地から強制移住させられた模様である。
番組は「2011年11月までに牧戸の80%が取り壊され」、「禁牧」となったと報じている。そして、道路の舗装および他の建築計画が郊外のモンゴル・コミュニティーにおいて「スムーズ」に実行に移されたという。
ところが、同番組では、ウルヘシグという牧民が祖先の土地から移住することを拒否し、以下のように中国の政府関係者に伝えていることも報道した。
「私は移住しない。私たちは何世代にもわたってこの土地に住んできました。ここにある青い空、白い雲、牧草地と湖は私たちの心や魂と一心同体の命綱です」
『新疆日報』の「ヘジンの牧民が牧地の生態系回復のため故郷を離れた」(2013年6月24日付)と題する記事では、バヤンボラグから移住した牧民が「今ではほとんど牧民から農民に変わり、幸せな生活を送っています」と答えている。
ところが、影響を受けたコミュニティーからの最新情報は逆の事例を伝えている。牧民たちは、当局による牧草地の収奪と強制移住に対して数十年にわたり抵抗している。
「私たちはかつて自治区区都のウルムチを訪ね、市の中央広場に2基のゲルを設営して強制的に解散させられ市から追い出されるまで、自分たちの土地の守ろうと要求し続けたのです」と、もう一人の牧民がSMHRICに語った。
(原文)http://smhric.org/news_535.htm